縄田雄二・小山憲司編『グローバル文化史の試み』に、「グリニッジ天文台における文書管理の技法—ジョージ・エアリとアーカイブスの形成」を寄稿しました。中央大学人文科学研究所を拠点に行われた、同名のプロジェクトの成果です。
私が担当した章では、19世紀中葉に、天文台長エアリが天文台の図書・雑誌と手稿資料(manuscriptsやobservations)の徹底した整理に乗り出し、新しい史料や観測記録の収集にも熱心に取り組んだ様子を論じています。とくに、なぜエアリが図書室の改良と他の文書の整理にこだわる必要があり、天文台の情報・資料管理システムを整えたのかを検討しています。この主題について、現在も追加の調査を続けており、今回の論文は中間報告という位置づけです。
このときに整理された文書は、現在のRoyal Greenwich Observatory Archivesの原型になったと考えられます。この史料は、グリニッジのNational Maritime Museumではなく、Cambridge University Libraryに所蔵されています。グリニッジ天文台史と18・19世紀の天文学・自然科学史の貴重な史料であり、近年、主に科学史の研究で参照されることが多くなっています。