岩波講座 世界歴史 第16巻『国民国家と帝国 19世紀』にコラムを寄稿しました。

岩波講座世界歴史 第16巻 『国民国家と帝国 19世紀』にコラム「欧米諸国における科学の制度化と発展」を寄稿しました。

世界史に関する重要な講座に寄稿する貴重な機会を与えていただきました。このコラムでは、西洋諸国における近代科学の制度化について、実験文化の拡大、科学者の専門職業化、科学技術と公共空間・インフラの変容、科学と国家・帝国との関係という視点から整理しました。

全体の目次は以下のとおりです。
展 望―Perspective
「混沌」から「傲慢」へ――「長い一九世紀」におけるヨーロッパと南北アメリカ………北村暁夫

問題群―Inquiry
ヨーロッパにおける国家体制の変容………割田聖史
ナショナリズムとジェンダー………姫岡とし子
移民の世紀………貴堂嘉之

焦 点―Focus
海域から見た一九世紀世界………金澤周作
奴隷貿易・奴隷制の廃止と「自由」………並河葉子
一八四八年革命論………中澤達哉
「イギリス」にとってのアイルランド………勝田俊輔
一九世紀前半、米国の領土拡大と大西洋革命――テキサスを中心に………二瓶マリ子
近代ヨーロッパとユダヤ人………野村真理
植民地統治と人種主義………工藤晶人
コラム―Column
  一九世紀フランス社会とメディア………小倉孝誠
  世界史のなかの「明治維新」………奈良勝司
  欧米諸国における科学の制度化と発展………石橋悠人
  政治的スカンディナヴィア主義………村井誠人
  万国博覧会とジャポニスム………寺本敬子

貴志俊彦・石橋悠人・石井香江編『情報・通信・メディアの歴史を考える』が出版されました。

《いまを知る、現代を考える 山川歴史講座》『情報・通信・メディアの歴史を考える』に、第1章「世界的な電信網の誕生と時間・空間の変容」を寄稿しました。この章では、19世紀にグローバルな電信のネットワークが形成されたことを確認したうえで、人々の時間と空間の経験を変質させていく様々な科学や技術が発展したことを論じました。

以下は、同書の解説です。
解説:情報・通信・メディアの歴史を考えることは、産業や技術の発展だけでなく、情報の役割や影響を歴史的な出来事に結びつけて解析することができる点で重要です。情報や通信技術は、社会や文化の変化を促し、歴史の転換点を生み出す要因となることがあります。たとえば、戦争や政治の決定、文化の変容、経済の発展などは、情報や通信の発展と密接に関連しています。
また、最後の座談会でも話し合われていますが、情報通信の歴史を学ぶことで、現代社会や未来の社会における情報通信の役割や可能性についても考えることができます。人工知能の発展など、情報技術の進化は急速に進んでおり、これによって今後も人間の役割や社会の変化がもたらされるでしょう。歴史的な事例をもとにして、情報技術が人間社会に与える影響を予想し、それに対する対応策を考えることができるかもしれません。ただ、今後の情報技術の発展によって、コンピュータそのものが形骸化し、時代遅れになる可能性も考えられます。
情報・通信・メディアの歴史を考えることは、歴史学の視点から現代社会や未来社会を見つめ直し、人間の役割や社会の進化を考えるうえで重要な学習の一部であるといえるのです。

縄田雄二・小山憲司編『グローバル文化史の試み』に寄稿しました。

縄田雄二・小山憲司編『グローバル文化史の試み』に、「グリニッジ天文台における文書管理の技法—ジョージ・エアリとアーカイブスの形成」を寄稿しました。中央大学人文科学研究所を拠点に行われた、同名のプロジェクトの成果です。

私が担当した章では、19世紀中葉に、天文台長エアリが天文台の図書・雑誌と手稿資料(manuscriptsやobservations)の徹底した整理に乗り出し、新しい史料や観測記録の収集にも熱心に取り組んだ様子を論じています。とくに、なぜエアリが図書室の改良と他の文書の整理にこだわる必要があり、天文台の情報・資料管理システムを整えたのかを検討しています。この主題について、現在も追加の調査を続けており、今回の論文は中間報告という位置づけです。

このときに整理された文書は、現在のRoyal Greenwich Observatory Archivesの原型になったと考えられます。この史料は、グリニッジのNational Maritime Museumではなく、Cambridge University Libraryに所蔵されています。グリニッジ天文台史と18・19世紀の天文学・自然科学史の貴重な史料であり、近年、主に科学史の研究で参照されることが多くなっています。

日本18世紀学会 啓蒙思想の百科事典編集委員会編『啓蒙思想の百科事典』に寄稿しました。

『啓蒙思想の百科事典』(丸善出版、2023年)に、項目「測定と器具」を寄稿しました。
18世紀の西洋諸国における機器メーカーの存在、地球の形状とメートル法、経度の測定と世界の計測について整理しました。
大変興味深い事典ですので、ぜひご参照ください。

中央大学文学部編『学びの扉をひらく・下ー時間・記憶・記録』(中央大学出版部、2022)に、近代イギリスの時間意識に関する概論を寄稿しました。

中央大学文学部実践的教養演習編『学びの扉をひらく』に、「近代イギリスの時間意識を考える―産業革命・標準時・帝国」を寄稿しました。
中央大学文学部で展開している「実践的教養演習」という授業で、学生が中心となって「本というモノをつくる 」という課題のもとで制作された論集です。
授業の詳しい案内はこちら
文学部の13専攻と1プログラムの教員が、時間・記憶・記録というテーマに沿って自由に論考を寄せました。

私の論考では、近代イギリスにおける時間意識の転換について論じています。産業革命による時間意識の厳格化やヴィクトリア朝における時間の標準化に関する通説を整理したうえで、近年の研究で新しい視座が次々と提起され、従来の説明が発展的に乗り越えられようとしてることを解説しました。

松本悠子・三浦麻美編著『歴史の中の個と共同体』(中央大学出版部、2022)に、グリニッジ天文台で最初に働いた女性天文学者たちに関する論考を寄稿しました。

松本悠子・三浦麻美編著『歴史の中の個と共同体』に、「グリニッジ天文台の女性天文学者ーアニー・マウンダーと学者たちの「共同体」」を寄稿しました。
3年間にわたり実施した中央大学人文科学研究所の共同研究の成果です。
拙稿では、19世紀末にグリニッジ天文台で初めて「計算係」(computer)雇用された女性学者たちの経歴・キャリア・実績を論じています。なかでもマウンダーが天文学の学会で編集委員長として辣腕を振るった様子や日食の観測遠征に参加した経緯に焦点をあてました。